宮崎県の方言に「てげ」という言葉があり、土地の人と話をすると、この「てげ」がよく出てくる。
「とても」とか「すごく」という意味があるらしい。
「大概」という言葉が訛って「てーげー」となったのが語源と言われているそうだ。
例えば「てげ、腹立つ」と言うと、「凄く(とっても)腹立つ」とかの意味になり、 副詞として使うのだとわかってきた。
鹿児島県にも同じ方言があるらしいので九州ではよく使う言葉なのだろうか。
もうひとつ「てげてげ」という事葉がある。
私は宮崎に少々縁があったので、この「てげてげ」もよく耳にした。
「てげ」が2つ続くので、単純に「てげ ✕ 2」で「凄く凄く=もの凄く」という意味だと思っていたのだが誤解していた。
「てげてげ」は、「そこそこでいい」とか「適当でいい」とかの意味になるのだ。
宮崎で「てげてげにしちょきない」と言ったら、「適当でいいよ」という意味になる。
「すごい」を2倍にすると「ものすごい」的な意味になるんじゃないかと思ったのだが、「適当に」になってしまう。
全く違うじゃないか。摩訶不思議である。何やら正反対の言葉に思えたからである。
どうにも気になって、この「てげてげ」という不思議な言葉の語源を調べてもみてもよくわからない。
何故「てげ」と正反対の意味になってしまうのだろう。
そんなに頑張らなくてもいいよ
ある日、思いついた事があって自分で「てげてげ」の語源を勝手に想像してみた。
もちろん、私の想像なので別の本当の語源があるかもしれないと断っておくが。
「てげてげ(適当でいい)」
は、
「そんなに頑張らなくてもいいよ」
って意味じゃないだろうか、と思えたんだ。
「凄く」を2倍にして物凄く頑張ったら疲れちゃうよと。
そんなにしなくてもいいよ、適当でいいよって。
昔の人は、落ち込んでる(沈んでいる)人たちに思いやりを込めて、この言葉を使ったんじゃないかって。
会社勤めの時代はもちろん頑張った。
仕事や人間関係で辛いとき歯を食いしばって頑張った事もある。
世界じゅうの人たちも同じように頑張っているだろう。
でも、ふとした時に心も身体もへとへとになり、心が折れそうになる時がある。誰でもある。
心の病気になってしまう人もいるし、誰かの力を借りて、あるいはもちろん自力で立ち直れる人もいる。
はたして、心が疲れている人たちに「頑張れ」とか「もっと頑張れ!」とかの言葉が届くのだろうか。
メンタルの本を読むと必ず「頑張れとかは言うな」とあるし、心が疲れた人に「頑張れ」は、かけてはいけない言葉だと理解している。
じゃあ、そんな時に「そんなに頑張らなくていいよ」というニュアンスの言葉をかけてあげられたらいいなと考えていた時、ふと「てげてげ」が思い浮かんだ。
「もっと穏やかに生きなよ」「人生他にも楽しい事があるさ」「仕事一筋じゃなくてさ」。。。
そんなふうに考えていたら「てげてげにしちょきない(適当でいいよ)」という言葉が魔法の言葉に思えてきた。
昔も今と同じように心の病になる人がいたはずだが、今と違ってそのような病気をなかなかカミングアウトできない時代だった。
だからこそ昔の人は、疲れた人たちに「そんなに頑張らなくてもいいんだよ」って意味で、「てげてげ」って言葉を作ったんじゃないかと。
「もっと頑張れ!」
じゃなくて
「頑張らなくてもいいよ」
って。
自分をコントロールして頑張っている人たちから見たら、やもすると不謹慎な言葉かもしれない。
「適当にしとけってどういう事だ(怒)」とかね。
故に隠語的な使い方もあったんじゃないかとも思えた。
気張らずに穏やかに生きようよ
そんなふうに勝手に想像したら昔の人は凄いなあと思えてきた。
先人たちは本当に凄い。魔法の言葉で他人を勇気づけてたんだ。
いつからか疲れた人たちはもちろん普通の人たちにも、「てげてげでいいよ」って言葉をかけるようにしようと思った。
他から見たら「変な事言ってる」と思われたかもしれないが、私としては精一杯のエールの言葉となっていたんだ。
今でも全ての人たちに、
「てげてげにしちょきない」
と言いたい。
「そんなに頑張らなくてもいいよ、人生、気張らず穏やかに生きようよ」
って。